「死」について考える〜「死」とは何か、「死」とどのように向き合うべきか【本からテーマを探し考える】

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人間は分からないことに対して「恐怖」感じます。現在は、分からないことに対してはインターネットで調べれば大抵のことは情報として公開されているため知識を得れば恐怖を軽減することができます。

しかし、「死」についてはどのようなものかを事実として伝えることができる人はいません。そのため、人は「死」に対しての恐怖を拭うことは難しいのです。難しいため人は恐怖から目を逸らします。

私自身、知らず知らずに目を背けていた部分がありましたが、谷口ジローさんの「犬を飼う」という本を読んでふと「死」というものについて意識が及びました。

「死」について考えることは、感覚的にですが生きていくにあたってとても重要なことだと思います。今回は、本を通して考え、「死」というものについてできる限り言葉として述べていきたいと思います。

1.犬を飼う

参照:https://www.amazon.co.jp

「犬を飼う」 谷口ジロー(著)

Amazonにて確認

この漫画は、「孤独のグルメ」などでも知られる谷口ジローさんが描かれたものです。5編収録されています。実体験を基にされていてエッセイ本としての立ち位置だと思います。

この作品については、五編共に動物が必ず出てきます。動物を人間を通して「生」、「死」が描かれておりとてもよく考えさせられる作品です。

1−1.犬を飼う

この漫画の表題作となっている作品になります。私が「死」というものについて深く連想させた話もこちらのものになります。

この話は、タムという老犬が死ぬまでの限られた期間をどのように生き、そして死んでいったかが描かれています。主人公の夫婦がタムに寄り添い心情を描いていることでペットというもの良さと同時に切なさが良く表現されていると思います。

この話は読み切りとして描かれたものということもあったため生まれてからではなく、死ぬまでの限られた期間にフォーカスすることで濃い内容の作品となっています。

タムはすでに衰えており、活発な動きをすることはできません。主人公夫婦はそんなタムに少しでも寄り添い助けを加えることでタムが長く良い生活が送れる様にします。

しかし、サポートしても時間と共にタムはどんどん老いていきます。便を漏らし、楽しみにしていた散歩すらも続けることが難しくなっていきます。思う様に体を動かすことができなくなっているのでしょう。

そしてついに死を迎えに来る時がきます。ここでは、死を目前にしながらもタムが生き続けようとする描写が描かれています。

主人公夫婦は軽い気持ちでタムを飼い始めました。しかし、タムが死ぬということを経験して人間と同様な気持ちになることを実感します。

大抵の動物は、人間より短い寿命で生涯を全うします。ペットを飼うということは良かったことは思い出として残りますが、思い出と比例して別れが辛くなります。ペットを飼うということについて深く考えさせられる作品です。

1−2.そして‥‥猫を飼う

表題作の第一編ではペットを飼うことで体験する「切なさ」が描かれていますが、第二編の「そして‥‥猫を飼う」ではペットを飼うことで得られる良さが描かれています。

第一編で登場した主人公夫婦は猫を引き取って欲しいという相談を受けます。タムを亡くしたことで、ペットを飼うことで体験する辛さも分かっている夫婦は乗り気ではありません。

しかし、半ば押し付け気味に渡され家に連れて来るとやはりペットは良いもので面倒ごとが多い猫でも可愛く見えてきます。雑巾の様な猫を「ボロ」と名付け可愛がります。

そんなある日、ボロは雌猫ということもあり妊娠します。不安が多い中ですが3匹の子猫が生まれます。夫婦は、鈍臭いボロが子猫の面倒をしっかり見るか不安もありましたが、ボロはそんな不安を払拭し良い母猫として面倒を見ていきます。

この第二編では、生き物が生き生命を繋いでいく様子が描かれています。夫婦は頼りないボロを心配していますがそれは人間の都合で、動物も「必死に生きている」ということが描かれています。

1−3.庭の眺め

第三編では、ボロが産んだ3匹の子猫を引き渡さなければいけないという状況のもと話が進んでいきます。

ボロを含め猫が4匹になってしまったことで、全ての猫を飼い続けるのは難しいと判断した夫婦は子猫を引き渡すことを決意します。

子猫を1匹引き渡しますが、その際に子猫を探しあぐねるボロを見てさらに辛い気持ちになります。ボロや子猫にとって残酷となってしまうことをしているという認識も夫婦には芽生えるのでしょう。

大事に育てている夫婦だからこそ、辛い選択です。ペットとの別れは「死」だけではないのです。さらに自身がその選択を行わなければいけないということが辛さを物語ります。

1−4.三人の日々

第四編の「三人の日々」では、夫婦の姪に当たる少女が家を訪れ短期間生活を共にします。そこで登場人物それぞれの複雑な心情を描いている作品です。

少女「あきちゃん」は群馬にある家から夫婦が住む東京まで家出してきます。その原因はかつて亡くなったお父さんに変わり新しいお父さんがやって来るかもしれないということに気持ちの整理がつかないためです。

思春期で複雑な心情を持ちやすいあきちゃんを夫婦は受け入れます。しかし、夫婦はあきちゃんの問題は自分たちが解決することはできないことは分かっています。その中でも、夫婦はあきちゃんにできる限り寄り添います。

夫婦は最終的にあきちゃんが新しいお父さんとも仲良くなったという報告を受けます。複雑な心境があるのにも関わらず問題に向き合うあきちゃん、そのきっかけを与えようとする夫婦の関係が描かれています。

1−5.約束の地

第五編については、これまで出てきた夫婦とは別の主人公の話です。

※山について詳しくないため語弊がある場合は申し訳ございません。

主人公は、ヒマラヤの山岳の頂上を目指し登ります。山岳に登る際はチームとして取り組みますがとても過酷なことで「死」が隣り合わせという状態です。

主人公はパートナーと二人でアタックします。アタックとは、最終キャンプ地から頂上を目指し登ることを言うそうです。頂上に近づくほど気候は荒れ危険が多くなります。そんな中、パートナーの一人が崖から落ちます。トランシーバーはパートナーが持っているため主人公は指示も仰ぐことができません。時間が過ぎ酸素も失われ思考能力も下がります。

「家族がいて帰らなければいけない」そのような思考も微かにありますが主人公、酸素不足から眠ってしまいます。雪山で眠るということは死につながります。そこで、主人公はユキヒョウを目にします。

ユキヒョウはあまりにも美しく、そこでは女神の化身とも言われています。美しさから追って行くと仲間の元にたどり着きます。無事生還し家族の元へ戻ります。

家族がいることから、主人公は山に登ることを切り捨てます。子供が生まれ家族のために働きます。ある日、子供と訪れた動物園でユキヒョウを目にします。そこで山のことが思い出されます。そして、主人公は再び山に登ることを決意します。

この作品は、「夢」も死と隣り合わせであり、だからこそ達成することに価値が生まれ喜びがあるのだということが描かれていると思います。

2.「犬を飼う」をテーマに「死」について考える

2−1.「死」とは何か

「死」というテーマで考えた時に真っ先に思ったのが「死」とは何なのかということです。

死んだ後どうなるかですが、哲学的に見ると「死」とは、完全な「無」であったり、宗教上でいうと体は滅びて魂は残る。残った魂は輪廻転生するなどが内容としてありました。

私としては、哲学的な考えが近いように思いますが正直分からないというのが本音です。ただ、この「死」について調べていく中で興味深い内容を見つけました。

やはり未成年の子供を持つ患者さんは死ぬことを受け入れない。印象的なのは50代で末期なのに代替医療に手を出して、1500万円くらい使った患者。効果がないのに嫁、娘も延命治療を止めない。身体中にスパゲッティのように管を巻きつけたまま死にました。

参照:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/34347

この文章を見て、疑問が浮かびました。俗にいう植物状態の人って生きていると言えるのか。生きる=呼吸していることなのか。

※この文章を見て不快に思った場合は大変申し訳ございません。

「死」とは反対の意味である「生」について考えてみることで「死」についてのヒントが得られるかもしれないと思いました。「生」について私は考えたことを記載します。

2−1−1.生きるとはどういうことか

私たち人間は基本的には自らの命を捨ててはいけないとされています。これは、思うに私は命には価値があるからだと思います。

例えば、残酷な話ですが幼い頃虫を殺してしまったことは大抵の人があると思います。今現在でも、害虫が出れば殺す方が大半だと思います。

なぜでしょうか。それは、虫の命の価値は人間の命の価値と同等ではないとみなしているからだと思うのです。命が宿っていない人の物を壊したら罪になるのに命が宿る虫を殺しても罪にはならないということがその事実を物語っていると思います。

つまり、人間の命には価値があるからこそ捨ててはいけないのです。

この視点で考えた場合、上記のケースですが仮に生きているみなしたとして、存在しているだけのみになってしまった「生」にどのような価値があるのでしょうか。

「犬を飼う」の中でも老犬タムを散歩させる夫婦に対して「かわいそうだから休めせた方が良い」発言する登場人物もいます。しかし、夫婦は休ませることで歩けなくなってしまう方がかわいそうということでできる限り長く散歩させようとサポートします。

ここで、考えて見ると選択肢を一切失った人生に対して本人はどれほどの価値を感じるのでしょうか。植物状態になったら本人は伝えることができません。

当の本人は伝えることができないため事実は分かりませんが、私は自分の立場になったことを想定した場合一切の選択肢がない状態で自分に価値が見出すことできる自身はありません。

私はこの考えから、「生きるとは選択できる自由があること」を指すのではないかと思います。そのため、選択肢がなくなった状態は生きているとしても死んでいる同然の状態ではないかというのが今現在私が出せる結論となっています。

賛否がある意見をしました。これは今私が出せる限りのものを出した意見です。不快にさせてしまった場合は本当に申し訳ございません。

2−2.私たちは「死」と向き合わなければならない

日々生活していると生きていることが当たり前になります。当たり前になると終わりを迎える実感が薄れていきます。

表題作となっている「犬を飼う」では、「死」はいつか必ず訪れるものということで描かれているよう私は感じます。私が今回「死」について考えたのもこの作品による影響が大きいです。

「死」は必ず訪れるからこそ向き合わなければいけないのです。「死」と向き合うことで「生」を有意義に使うことができるようになるのです。

例えば、あなたは欲しかった物をやっと購入できました。購入した当初はすごく大事にし汚れないように、壊さないように大切に扱います。

しかし、そんな物でも1年経ち使い慣れた頃には使い方がどんどん雑になります。「これぐらいであれば壊れない」そんな感覚から雑に扱ってしまうのでしょう。

壊れてから気づくのです。壊れたことを後悔する自分がいることに。一度雑に扱うことで丁寧に扱う線引きがどんどん曖昧になっていくのです。雑に使っているとは何となく分かりながらつい雑にしてしまいます。

人生においても同じことは当てはまると私は思います。時間というのは有限です。

「多少無駄にしても影響は少ない」このような感覚から時間を雑に扱っていませんか。物は壊れても購入し直すことで代用が効きます。しかし、時間は一度使うと返ってきません。

いざ「死」の直前で気づいたのでは遅いのです。いつか必ず訪れるからこそ向き合い大事に使っていく必要があるのです。

2−3.「死」と向き合うためには

「死」と向き合い生きていくことが重要と分かりましたが、実践するとなると難しいです。やはり生きていれば何か病気など変化がない限り生きることが当たり前になり、さらに「死」について考え続けるのは恐怖もあるため継続が難しくなります。

「約束の地」の主人公は、山を登るので通常の人より「死」を実感する機会は多いと思います。しかし、普通に生きている人にとって死のリスクを限りなく軽減しているこの世の中では実感することは難しいでしょう。

私自身まだどのように「死」と向き合えば良いか分からない部分がありますので調べて見ました。一つは、瞑想をすることで「死」について意識することなどが挙がっています。瞑想で自分が死に近づいていることをイメージするそうです。

また、私自身方法として良いのは、やはり「死」というものが多く表現されている作品に触れ合うことです。作品を見てただ悲しむのではなく、自分が登場人物の立場であったらどのように行動するだろうかなど考えることで「死」と向き合うことができるのではないかと思っています。

「死」と向き合うということはとても難しいもので永遠のテーマになると思います。その中でもそれぞれが試行錯誤していくことが大事です。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

「死」については大抵が見えない部分であるため答えを出すことは非常に困難であると言えます。ですが、困難であったとしても私達は「死」について向き合い考え続ける必要があります。

世の中の人間は自身のことを本当に大事なものとして扱うことができていない様に思います。それは、死から目を背け人生が限りあるものと言うことについて理解しないようにしているためだと考えます。

しかし、自身を大事に扱おうが扱わまいが最終的に行き着くの「死」です。「なぜ、大事にしなければいけないか。」そのことについて今は結論は出ませんが少なくとも自身を本当に大事にするためには「死」と向き合う必要があるのです。

ただ、今回「死」について考えて分かったことは日々の生活にしろ作品にしろ「死」というものは身近にあり世の中に溢れているということです。身近にある存在だからこそ向き合うきっかけは用意されています。

この記事によってあなたの人生がより良く価値の高いものになることを願います。

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